エッセイ「ギュッ!な物語」

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ギュッ!な物語 Hugしたくなったその瞬間

Story. 013 悩んでいるという美しさ

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 シェイクスピアの「ハムレット」は、古今東西、さまざまな人物によって芝居になり、オペラにされ、映画になったりしています。とにかくシェイクスピアは400年越えて未だにわたしたちを魅了する戯曲をいっぱい創った巨人です。現代の研究成果をそのまま信じるなら、彼は自らが舞台に立つ俳優でもあったわけです。池の中で空を見つめたまま冷たくなっているオフィーリアの絵(ミレー作)で、ハムレットになじみのある方も多いのではないでしょうか。
 シェイクスピアの時代には、朝から始まったお芝居が、幕を替えながら夕方まで続いていくという話を聞いたことがあるかもしれません。が、それは研究成果から間違いだといわれています。彼が活躍したグローブ座(元シアター座)では、ほとんどの人々が立ち見で、座って観劇できるのはわずかな特権階級のみでした(グローブ座に限ったことではないのですが)。そのため、ひとつの演目は約2時間程度のものだったと推測されています。
 それから当時は、今のようにひとつの演目を一週間ロングランで演じるといった形式でなく、ほぼ毎日演目を替えて、人々の足を日常的に劇場へと向かわせるよう、工夫されていました。しかし、毎日演目を変える・・・セリフの記憶力たるや驚くべきものですね。
 さて、ハムレットという登場人物は、劇中絶えず悩んで、苦しんでいます。デンマークの王である父を殺され、その真犯人でもある弟(クローディアス)と密通していた母(ガートルード)のことで恋人オフィーリアも死に追いやってしまったハムレット。彼自身も、最後にはオフィーリアの兄と剣で闘い命を落としてしまいます。最後は、だれもいなくなってしまう舞台。これが悲劇といわれるゆえんです。  
 悩んで、悩み抜いて、苦しんだハムレット。もちろんそれはお芝居の世界の話。それをわかっていながら、観劇者のわたしたちもついつい心はハムレットに心惹かれていきます。ハムレットに対して、なにもできないけれど、何もできないからこそ、思わずギュッと抱きしめたくなります。

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