エッセイ「ギュッ!な物語」

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ギュッ!な物語 Hugしたくなったその瞬間

Story. 003 世界中の読者のハートをギュッと抱きしめた王子さま

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 海外文学の翻訳本の寿命は、その使用言語の耐久性から30年が目安とされています。ここ数年で多くの新訳本が出版された背景には、そういった事情があります。
 中でも幅広い年代の人気をさらったのがサン=テグジュペリの『星の王子さま』。日本人の人気作家などもその翻訳に参加して、ちょっとしたニュースになりました(また『星の王子さま』は2005年に日本での国内著作権が切れたことも重なっておおくの新訳が出ました)。
 その『星の王子さま』は、1943年アメリカで初版が出版されて以来、みるみるうちに世界160カ国以上で翻訳され、総発行部数は8,000万部を超える世界的ベストセラー&ロングセラーに成長しました。
 一方その背景で、発行当時47点あったとされる直筆の原画のほとんどの行方がわからなくなり、世界で確認されているのは5点のみでした。しかし驚いたのは、王子さまが4番目に訪れる星に住む「実業家」を描いた水彩画が2007年日本で発見されたのです。この6点目の原画の発見に世界中が注目したのはまだ耳に新しいですね(厳密な意味での真贋は更に調査中とか)。
 いずれにしろ今でもこの『星の王子さま』を「わたしに影響を与えた本のナンバーワン」に挙げる人たちが大勢います。

サン=テグジュペリは云います。
 「なにが私をとらえたかはわかりません。私は一日中デッサンをしていて、そのために時間は短いように感じられます。私は自分に向いているものを発見したのです。木炭のコンテです。クロッキー用の画帖も買いました。一日の出来事や身振り、同僚たちの微笑や犬のブラックの無遠慮などを、描けるかぎりそこに描いています」(みすず書房)

 紙さえあれば、あっという間にその隙間を文章とスケッチで埋め尽くしたというサン=テグジュペリ。なんと小さなレシートの裏側にも、彼の想いが丹念に描かれています。そんな小さなスケッチから『星の王子さま』へとつながる物語のヒントが生まれたのかもしれませんね。ギュッと抱きしめたくなる物語。あなたはお読みになっていますか。

平野雅彦プロフィール

図書館や博物館の立ち上げ、ブックアートギャラリーの企画・運営、出版、企業のキャンペーンやキャラクターデザイン、ブランディングなどの企画に参画。講座・講演、各種審査員多数。テレビやラジオのコメンテーター、本の紹介番組などにレギュラー出演。日本新聞協会賞、ACC賞など広告賞多数。国立大学法人静岡大学人文学部非常勤講師。

http://www.hirano-
masahiko.com/

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